物語
イントロダクション
楽しくて、切なくて、ちょっとだけ勇気が湧く。
そんな心に残るアニメーション映画が誕生しました。
原作は、2009年に、紫綬褒章を受章した芥川賞作家・髙樹のぶ子が、自らの幼少時代をモデルに描いた自伝的小説「マイマイ新子」。
小説の中でいきいきと描かれた昭和30年代の山口県防府の風景が、圧倒的に美しい映像となってよみがえりました。
これを舞台に、空想好きで多感な少女・新子が豊かな自然のなかで毎日を真剣に生き、
時にヒリヒリとした苦い思いをしながら、仲間たちとゆっくり成長していく姿が描かれています。
映画化の指揮を執ったのは、片渕須直監督。
TVアニメ『名探偵ホームズ』(84)やスタジオジブリ作品『魔女の宅急便』(89)で演出補として宮崎駿監督を補佐し、
TVシリーズ「名犬ラッシー」(96)では監督として勇気と感動のシリーズをまとめあげ、劇場用映画では『アリーテ姫』(01)などを監督した実力派。
制作スタジオは、その片渕監督が信頼を寄せる、マッドハウス。
2006年夏の話題作『時をかける少女』や2009年夏の話題作『サマーウォーズ』など、一貫して緻密でクオリティ高い作品を生み出し続けるアニメーション・スタジオです。
声の出演には主人公・新子役に『ヘブンズ・ドア』(09)『GOEMON』(09)などの映画やテレビ、CMと、幅広いジャンルで活躍する福田麻由子。転校生・貴伊子役にヤングジャンプ「制コレGP」グランプリに輝き、近年の活躍が期待される水沢奈子。空想の中の少女・諾子(なぎこ)役に、実写版「ちびまる子ちゃん」のまる子役、「女の子ものがたり」などで注目される森迫永依。また、女優のみならず司会やナレーター、そして絵本作家とさまざまなジャンルで活躍中の本上まなみが、新子の母を演じています。
どこまでも続く麦畑と青い空、そのなかで自分たちの世界を真剣に生きる子供たちの、今日と明日の物語。
そう、ここにいるのは、明日を信じていたあの頃のあなたなのかもしれません。
みずみずしい感性で綴られる映像とストーリーを、いまの子供たちへ、そしてかつて子供だったすべての大人たちへ、お届けします。
2009年/日本/94分/35mm/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
ストーリー
想像の翼をぐんぐん広げ、千年前の町の姿やそこに生きる幼い姫まで思い描く。
そんな少女・新子が、転校生・貴伊子や仲間とともに過ごす、楽しくも切ない季節。
ゆったりとした自然に囲まれた山口県防府市・国衙。
平安の昔、この地は「周防の国」と呼ばれ、国衙遺跡や当時の地名をいまもとどめている。
この物語の主人公は、この町の旧家に住み、毎日を明るく楽しく過ごす小学3年生の少女・新子だ。
おでこにマイマイ(つむじ)を持つ彼女は、おじいちゃんから聞かされた千年前のこの町の姿や、そこに生きた人々の様子に、いつも想いを馳せている。
彼女は“想う力(ちから)”を存分に羽ばたかせ、さまざまな空想に胸をふくらます女の子であり、
だからこそ平安時代の小さなお姫様のやんちゃな生活までも、まるで目の前の光景のようにいきいきと思い起こすことができるのだ。
そんなある日、東京から転校生・貴伊子がやってきた。
都会とは大きく異なる田舎の生活になかなかなじめない貴伊子だが、好奇心旺盛な新子は興味を抱き、
お互いの家を行き来するうち、いつしかふたりは仲良くなっていく。
一緒に遊ぶようになった新子と貴伊子は同級生のシゲルや、タツヨシたちとともに、夢中になってダム池を作る。
そして、そこにやってきた赤い金魚に、大好きな先生と同じ「ひづる」と名前をつけ、大切に可愛がるようになる。
やがて新子たちは、学校が終わるとこのダム池に集まって過ごすようになっていた。
しかし、ふとしたことから「ひづる」が死んでしまい、それを機に仲間たちとの絆も揺らぎ始めていく。
そんななか、新子は「ひづる」そっくりの金魚を川で見かけたという話を聞き、貴伊子や仲間たちと金魚探しを始めるのだった。
そして、みんなの心が再びひとつになりかけたその時……。